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第44回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「習慣」結果と講評 

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結果発表
イラスト:福士陽香
■選考委員/高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

募集中のテーマ

■第47回 [ 逆転 ] 
6/1~6/30(消印有効)

■第48回 [ 孤独 ] 
7/1~7/31(WEB限定)

※第48回から応募がWEB限定になります。

第44回結果発表
課 題

習慣

 課題に合わせて書かなきゃならない。もちろん、そう。でも、まずなにより大切なのは、良い小説、おもしろい小説を書くこと。それが原点です。今回は傑作が生まれました。

最優秀賞

 今回、甲乙つけ難い二作が残り、なおかつ、どちらもふだんならぶっち切りでトップの傑作。というわけで(おそらく)初めて、最優秀賞を二篇とさせていただきます。
 まずは大河かつみさんの「日本記録」。「今から約二十年前の話。私の家に野球のホームベースが届いた」と始まる。酒に酔って注文したのだ。返品も面倒と、家の玄関のドアの前に置いたのである。それから「私」は、帰宅すると、そのホームベースを踏んで家に入るのが「日課」、というか習慣になった。せっかくなので(?)、四角いベースも買って、職場に置いた。全部踏むと、一日に1得点。やがて……このお話、壮大すぎます!

最優秀賞

 もう一つの傑作は、永瀬櫻子さんの「あの子はいつも三号車」。「あの子」を初めて見たのは、桜の花が散った頃。高校の新入生だ。昔の「私」のような気がする。その子はいつも「七時十四分発下り電車」に乗る。いつも勉強している。でも、様子が変になってきた。イジメられているのか。そしてある日、ホームから飛び下りようとした瞬間、「私」は「あの子」に体当たりして止めるのだ。実は……なんというオチ。久しぶりに泣いた。

佳作

 渋川九里さんの「コーヒーが、買えない」は、ドタバタコメディーっぽいお話だ。主人公「伊藤悟」の習慣は、出勤前に、コンビニのレジでまず精算し、カップを受け取り、コーヒーマシンから抽出されるコーヒーを受け取ること。そこから一日が始まるのだ。ところが。ある日、マシンに「故障中」の張り紙が。翌日は、カップが切れている。また翌日は、注文までしたのに、マシンの前が大混雑。時間がなくなりカップだけ持ってコンビニを出た。そう、連日、コーヒーを持って行けないのである。そして……結末は可哀そう。


 香具山ゆみさんの「希望的観測」は「ぼーっとしていたら、ふとした拍子に顔を上げてしまう」という文で始まる。どうってことない? いや、これが驚きの始まりだ。「ぼーっとして」顔を上げるのは、夜空だと月を見る「習慣」があったから。でも、月はもうない。壊れてしまったのだ! でも、ないならないで、みんな慣れてゆく。きっと月がない時代に育った子は、それが当たり前になっているだろう。では、なぜ月が壊れたのか……ここから驚きの理由がわかるのだが、その説明が、なんとなくわかりにくいのです。


 千織さんの「世界で一冊だけの本」の主人公「八千代」の習慣は、日記を書くこと。本屋にあった、中身が白紙の本「世界で一冊だけの本」を買い、そこに日記を書いてゆくことにする。一ページ目に「あなたが得た美しいものを、噛みしめてください」と印刷してある。よし、それではと、会社の中途採用の女の子について書くことにする。それから毎日、日記にはその女の子のことを書くようになった。そして……どんな結末になるのか、楽しみにしながら読んでいったのだが、ちょっと尻すぼみになってしまったのが惜しい。


 沖田みぞれさんの「フレンド・オブ・ウェンズデー」は、いい話であることに間違いはない。結婚して、この「田舎の町」に引っ越してきた「私」は、実は死産している。その後、夫の勧めもあって「毎週水曜の夕方」に「地域の防犯パトロール」をすることになった。楽しみは「蓮くん」という少年と出会って、「今週はどんなことがあった?」と話すこと。そんなある日「蓮くん」は、「今日でおばさんとお別れ」と告げる。その理由は……ここから驚きの展開となるのだが、ちゃんとしたオチになっていないかも。残念です。


 翔辺朝陽さんの「おじいちゃんの覚悟」で、主人公の「わたし」は「朝六時半、ラジオの大音量で目を覚ます」。「おじいちゃん」が「毎朝ラジオ体操をするのが習慣」なのだ。えっ、それでおしまい……ではない。十年前、おばあちゃんを亡くしてから一人暮らしをしている「おじいちゃん」のために、「わたし」の家族は、実家をリフォームして移り住んで来た。そして「わたし」は、なんでも干渉してくる「おじいちゃん」にうんざりしているのだ。でも、その本当の理由は……泣けるラストだが、オチとしてはどうかな。


 諸井佳文さんの「朝の習慣」の冒頭、主人公の「わたし」は「朝起きたらまずお湯をわかす」。すると「以前ならその頃に母が起きてきて湧いたお湯をちょっと冷まして白湯を飲む。それが母の習慣だった」。では、それがこの小説のテーマの「習慣」なのかというと、そうではない。なぜなら、母はもう死んでいるからだ。「いつも朝は忘れてしまい二人分の朝食を作ってしまう」。それが「習慣」なのである。なるほど。おもしろい設定なのだが、冒頭ですべてが判明して、残りはただの説明になってしまった。残念。

応募要項
課 題

■第47回 [ 逆転 ]

 たとえば野球でいちばん面白いのは「逆転サヨナラゲーム」。最後の最後でひっくり返るのを見るのは面白い。でも、ひっくり返される側になるのはちょっと……。さて、この世にはどんな「逆転」があるでしょうか。

■第48回 [ 孤独転 ]

 このテーマはまだでしたね。誰もが経験すること。ひとりぼっち。どの年代でも、どんな場所でも、いや、もしかしたら、「孤独」がふつうで、そうではない時の方が珍しいのかも。作品を楽しみに待っています。

※お知らせ&ご注意 第48回の応募分から郵送応募がなくなり、WEB限定とさせていただきます。郵送で応募されている皆様には申しわけありませんが、ご理解、ご了承のほど何卒お願い申し上げます。
締 切

■第47回 [ 逆転 ] 
6/1~6/30(消印有効)
■第48回 [ 孤独 ] 
7/1~7/31(WEB限定)

字数

・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。

書式

〔第47回〕
・書式は自由。用紙サイズはA4判。縦書き、横書きは自由。ただし、選考は縦書き、発表は横書きで行う。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。

wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
Wordファイルの中にあらかじめ書かれてある文言はすべて消してご利用ください。

その他

・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

応募方法

〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
・ペンネームを希望する場合は原稿にはペンネームのみを記入してください。原稿に本名が記載してある場合は、応募データにペンネームが書かれてあっても、本名で発表される場合があります。

〔第47回・郵送の場合〕
・必ず元原稿とコピー原稿を各1部、計2部提出。
・元原稿、コピー原稿ともタイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を明記すること。
・コピー原稿には住所など個人情報を書かないこと。
・締切は当日消印有効(余裕をもって提出ください)。
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装、クリアファイル等は不要)。
・作品は折らないこと。
・作品の返却は不可。

応募条件

未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
AIを使用した作品は不可。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。

発 表

第47回 2025/9/1、Koubo上
第48回 2025/10/1、Koubo上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。

応募先

● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 第47回・郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第47回小説でもどうぞ」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/