岸本葉子選 1000字エッセイ「おい・おい」 第4回募集&第3回結果発表


「老い」は老いる人にも老いられる人にも無関心ではいられない問題です。
「老い」について、切実なもの、ユーモアのあるものなど、バラエティーに富んだエッセイを期待します。
「老い」をテーマに、毎回の課題に沿ったエッセイをお送りください。
1961年、神奈川県生まれ。東京大学卒。エッセイスト。俳句、介護、老いに関するエッセイ多数。淑徳大学客員教授。
募集中の課題
第4回 [ ついにとうとう ] 締切 2/20(必着)
※「老い」をテーマに、今回は「ついにとうとう」に関するエッセイを募集します。
< 第3回 >
課題 /
年末年始
総評
二作に絞るのが苦しい面白さでした。年末年始の過ごし方は各人・各家庭で実にさまざま。「えっ、そうなの?」と意外性があります。覗き見するような感覚を読者が持てるとエッセイは強いです。そこに老いというテーマがどう重なってくるかが、今回の読みどころでした。
(岸本葉子)
最優秀賞
ものぐさのススメ
北村しえり(千葉県・71歳)
岸本講評
「ものぐさのススメ」は七十代、おひとりさまなる今日的な老いのあり方。不安でしょう孤独でしょうという世間の見方は百も承知で、突き抜けたのびやかさがあります。書かれている出来事は極小ですが、視野は広いです。自虐が痛くなく、ほどよいユーモアとなっているのは、作品を流れる老いへの肯定感と、何と言っても語りの上手さに支えられてリズムに乗って心地よく読めるから。
優秀賞
二つのおせち
西尾充史(北海道・58歳)
岸本講評
「二つのおせち」は構成が巧み。久しぶりに会う親に老いを感じてドキリとする。年末年始の出来事を書くエッセイに多いつくりですが、その親は故人であること、親が子ども返りしていたあのときが最後の年末年始であったことが結びに来て明かされる。付け足しのようなサクッとした言及であるだけに読後にジンワリ効いてきます。
佳作
ランニングシューズ
絢都りん(宮城県・23歳)
編集部コメント
本堂まではかなりの数の石段があるが、運動も兼ねて初詣に行くことに。登れるかと危ぶまれたが、ジムに通っている母親はすいすい先へ。一方、父親ははるか後方。年明け、父親とランニングシューズを買いにいったが、気がつけば父親はゴルフシューズを見ている。勝負などせず、好きなことをしていたいと思うのも老いかも。そして、それもいいかと思ってしまいます。
母と祖母
みなみん(埼玉県・41歳)
編集部コメント
〈母の用意した食事が食卓に並んだことは一度もない。〉は衝撃的でした。嫁である母は毎年一生懸命おせちを作るが、姑はそれを仏間に放置する。どういう仕打ちかと思いますが、母は今、そんな姑の面倒をみていて、姑のことを「なんだか最近可愛いのよ」とまで言う。どうしたらそんなふうになれるのかと思ってしまいますね。このお母さんに最優秀賞をあげたい。
誰のためでもない正月
みずの(北海道・40歳)
編集部コメント
元日しか休みのない義母のために、孫を連れて帰省するつもりだったが、「正月だからって、わざわざ帰省しなくてもいいからね」と連絡があり、一瞬、胸の奥に冷たい風が吹く。確かに、息子や娘の家族を迎えるほうも大変であり、その役割を手放したくなる気持ちもわかる。そう思った作者は帰省を見送ります。「来なくていい」と言うことはなるほど勇気でもあるのだなと思わせてくれるエッセイでした。
よう来たな、ほないつ帰る?
岡本千春(愛媛県・69歳)
編集部コメント
年末に息子家族、娘夫婦が帰省するのが悩みの種だという。子どもの相手をするのが煩わしいのかと思うと、そうではなく、ものがあふれて片付かないのが嫌だと言う。夫は捨てるのが嫌いでものだらけにする。捨てさせないし、作者が捨てたら「まだ使える」とゴミ袋から出す。それで精魂尽き果ててしまうのだと。なるほどと思いますが、タイトルと中身が微妙にズレている気が……。
小さくなったおばあちゃん
尾野瑞歩(神奈川県・54歳)
編集部コメント
小学生ののとき、正月二日におばあちゃんの家に行くと、おばあちゃんは作者の母親を見て、「どちら様?」と。おばあちゃんは自分の家なのに居場所がないようで隅で小さくなっています。その夜、大人たちはお酒が入って賑やかでしたが、おばあちゃんはやっぱり少し小さかった。おばあちゃんは少し認知症になりかけていたのかもしれませんね。なんだか切ないエッセイでした。
若さというエネルギーが与えるもの
七羽こむぎ(栃木県・41歳)
編集部コメント
実家に行くと、母が孫の相手をしてくれ、「大変だけど運動にもなるしいい機会」と言ってくれる。それを見ていて、昔飼っていた老猫のぶーちゃんとクロを思い出す。あるとき、三匹目の子猫を飼うことになったが、老猫は子猫に追いかけまわされ、じゃれつかれ、若いエネルギーをもらって元気になってしまったと。母と孫、老猫と子猫という二つの話をうまく交錯させた見事な構成のエッセイでした。
<選外佳作>
正月飾り
橋本楓(神奈川県・36歳)
編集部コメント
一人暮らしの祖母に母が電話で怒っている。正月飾りは二十八日までに飾らないと、二十九日は縁起が悪く、三十一日は一夜飾りでだめ、もう残すチャンスは三十日しかないと。そこで作者はこっそり三十日に祖母に電話し、「お正月飾り、飾った?」と言ってあげます。すぐに忘れてしまう祖母と祖母につらくあたる母との間に立つ作者の優しさにほっとするエッセイでした。
年末年始
北斗優(愛知県・57歳)
編集部コメント
年末年始には指サックを新調するが、売っていた店が閉店。通販でも買えますが、実際につけた感じがわからず、文具店を探し歩く。そしてついにあるお店で指サックを探し当て、店にある指サックを全部買ってしまったと。わかります。体の一部のようなものですからないと困りますし、この店舗もいつまであるかわかりませんから、あるだけ確保しておきたくなりますね。タイトルは……もうちょっと工夫を!
二年参り
矢吹純子(東京都・67歳)
編集部コメント
二年参りとは、大晦日の夜に初詣に行き、零時をまわってから家に帰ること。夫の実家に行ったときは二年参りをしているが、義父は行かず、義母も膝が悪く、最近は夫と二人で行っている。しかし、ある年は夫も深酒をして寝てしまった。作者は一人で二年参りに行き、無事、お参りを済ませたが、帰りに道に迷ってしまう。どうにか帰れましたが、慣れない土地でのハプニングが楽しいエッセイでした。
我が家のおせちのルール
のびまる(広島県・21歳)
編集部コメント
元日は仕事という母の都合上、元日の早朝に新年会をし、家族がそろっておせちを食べる習慣がある。そこではそれぞれが今年の目標を言いますが、最近は父も母も「とにかく健康」と言い、それは目標なのかと突っ込むところが楽しい。それで母親が仕事に出かけた途端、冷蔵庫から酒を取り出して飲むという摂生のない元気な父親の姿もまた面白い。
老いの先生は猫
しましま(静岡県・57歳)
編集部コメント
人も高齢化社会になりましたが、昔と違ってペットも高齢まで生きるようになり、私たちに老いるということがどういうことかを見せてくれるように。散歩では長い時間は歩けず、階段は降りられず、目が見えなくなり、ご飯を食べなくなり、あえぐように呼吸をするようになる。残酷のようですが、そこに生きるものの現実があります。「年末年始」とは関係なかったですが、思いがこもったエッセイでした。
めぐるめぐる
浅葱夕葉(広島県・30歳)
編集部コメント
お正月は祖母の家に、母とその姉妹、その子どもたちと、さらにその子どもたちの四世代十五人ほどが集まる。祖母はこの新年の集まりが特に楽しみ。そんな祖母は数年前、百貨店に行ってマニキュアを買ってきて、爪をペールルージュにしていたと。このエピソードが立っており、かつ祖母の心情をよく表していました。
焼き豚
神澤雅月(埼玉県・51歳)
編集部コメント
母は年末になるとおせち料理を作ったが、特に焼き豚は人気ラーメン店のチャーシューと言っていいくらい美味でした。この焼き豚を作る頻度がどんどん短くなり、やがて毎週のように持ってくるように。これが認知症の始まりだったようで、今はもうコンロの火をつけることもできません。料理を作ることに自分の存在理由を見出していた母の現在が切ないエッセイです。
母の「お正月」
団くるみ(神奈川県・58歳)
編集部コメント
母は「年末年始は忙しくてイヤになる」と言いながら、お正月の準備に余念がなかった母も、父の死後は「お正月にゆっくりするのが夢だった」と言い、年末年始は一人で旅行に。そんな母も認知症に。まだ八月なのに「そろそろお節の準備をせんといけん」と。たった今のことも思い出せなくても感情は残っていて、年末年始のあれこれを懐かしく思い出す母子の姿が哀しく温かいエッセイでした。
父のしめ縄
田村ゆう(大阪府・47歳)
編集部コメント
十二月二十六日になると、車で三十分ほどのところにある市場に行き、しめ縄を買ってくるのが年末の恒例行事となっていたが、父親は八十代になり、もうしめ縄はしないという。買いに行けないし、取り付けるために脚立に立つのも怖いと。今までできていたことができなくなり、本人も家族もできないということを受け入れていかなければならない。そのことがしめ縄に象徴されたエッセイでした。
焦げ付いたカレンダー
四つ足ライオン(埼玉県・41歳)
編集部コメント
精神疾患のある叔父の介護をさせられていた「僕」と、幼い頃から家事を背負わされてきた「彼女」が結婚し、互いの傷を評価せず、鑑賞し合うと決める。「僕」は妻のために伊達巻を作るが、失敗して焦がしてしまう。それを「美味しい」と言って食べる妻。不器用だけど家族としての日々を積み重ねていく夫婦の気持ちが温かいエッセイです。
第3回もご応募、ありがとうございます。
選考していて気になるのは、最後の最後で反省し、「これからは○○しよう」で締めるパターンです。
これは学生の小論文によくある定型で、締めやすくはなりますが、だいたいそこに嘘がある。
「これからは○○」はもう卒業したいですね。
第4回の課題は、「ついにとうとう」です。
「老い」に関して「ついに来た」と思うものは?
今、パッと思いついたものは、もう誰かとかぶっています。
あなたにしか書けないエピソードをお待ちしています。
<応募総数 174 編>
応募要項
課 題
第 4 回 [ ついにとうとう ]
応募規定
1000字以内。Wordの方は文字数カウント1000字以内。
応募点数制限なし。
応募条件
作品は未発表オリジナル作品に限る。
AIの使用は不可。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
賞
【 最優秀賞 】 1 編 = Amazon ギ フ ト 券 5000 円 分
【 優秀賞 】 1 編 = Amazon ギ フ ト 券 2000 円 分
【佳作】 6 編=記念品
【選外佳作】10 編=WEB 掲載
応募先
【WEB 応募】
【郵送】
A4 用紙に縦書き。40 字 ×30 行、または 20 字 ×20 行。
タイトル、〒住所、氏名(ペンネーム使用の場合は併記)、年齢、電話番号、 メールアドレスを明記。作品の返却は不可。
◾応募先 〒105-8475(住所不要)公募ガイド編集部「第4回おい・おい」係
締切
2026年2月20日(必着)
発表
季刊公募ガイド春号(2026/4/9 発売予定)誌上、Koubo 上
入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。