高橋源一郎の小説指南「小説でもどうぞ」第18回「噂」結果発表
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第21回 [ 学校 ]
4/1~4/30(消印有効)
■第22回 [ 祭 ]
5/1~5/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
噂
今回のテーマは「噂」である。全体を読ませていただいた感想は、いい人が多いなということだ。もちろん、ほんとうにそうなのかはわからないが。
今回の最優秀賞は、Y助さんの「金色の守り神」。舞台は「深刻な高齢化」に悩む山奥の「消滅間近の限界集落」。そんな「夢も希望もない」村に突然「噂」が流れた。かつて貧しい村人たちが金を出し合って購入した宝くじが一等に当選。それで買った「総重量百二十キロを超える、純金の釈迦如来像」をついに売ることにしたというのである。金の価格は高騰して、村人たちが一気に豊かになるはずだ。その噂を聞きつけて、遠くの親戚たちがやって来る。そして……なるほど。こんな噂なら最高!
藤岡靖朝さんの「噂話の百物語会」は、ちょっと怖い。怪談の百物語はよく耳にするが、「噂話の百物語」は珍しい。そして怪談ヴァージョンと同じように、そこでは参加者は「噂話」をするのである。主人公の「私」は「主にサブカルチャーの話題を扱うマイナー系の雑誌の編集をしている」のだが、そんな会があると聞いて参加してみる。始まってみると、最初はつまらない話ばかりだったのに、だんだんヤバイ「噂話」になってくる。そして、最後には……。よく出来たお話だが、終わる前に結末がわかるのが難点。惜しい!
田中ダイさんの「Fの湯」、タイトル通りに「Fの湯」という風呂屋に関する物語。ちょっと変わったこの風呂屋は「この町の情報発信源」。「不動の湯」「富士の湯」「フラミンゴの湯」と名前をつけるとき、迷ったオーナーが、だったらと「ふ」を残して「Fの湯」とした。そして、ここでは「ふ」縛りの会話をするのが慣例だった。「情報発信源」+「『ふ』縛りの会話」がこの物語の鍵となる。主人公の「私」の父が亡くなった後に勃発する騒動がその鍵によって収拾する。確かに面白いが、これもダジャレだった。
桝田耕司さんの「頭上風力発電」は、おかしな作品だ。というか、タイトルがおかしいですね。20××年。地球は未曾有の危機を迎えていた。そのために世界中の権力者は集まってとんでもない解決策を考え出したのである。エネルギー不足を補うため「人類は皆、小型風力発電用のヘルメットをかぶらなければいけな」くなったのだ。そのヘルメットをかぶらないとスマホの充電もできなくなったのである。しかし、そんなことが決められた理由についての噂があるのだが……。なんだと思いますか。あれですよ(笑)。
田村恵美子さんの「流れ星」は、ちょっと切ないお話。圭と陸斗の家族はアパートの隣同士。圭は陸斗より三歳年上の中学生だ。ふたりは気が合う友だち同士。午後の公園で圭は陸斗に、少し前の流れ星の話をする。そして、流れ星についてのネット上での噂を話す。地球を侵略するために宇宙人がやって来た、それが流れ星だというのである。さらに、圭は、宇宙人は人間に寄生して、この町にもすでに寄生された人間がいるというのだ。実は圭がそんなことをしゃべるのには切ない理由がある。なんだかグッとくる作品だった。
あやこあにぃさんの「真実抽出器」は、「真実抽出器」を「近所の怪しげな骨董屋」で手に入れた「僕」の物語。えっ、それは何? 読者はみんなそう思うだろう。実は「入れた言葉のサンプルの中から、真実をイメージするものが抽出され」る器械だ。要するに、その小瓶にささやきかけると、その言葉の真実を象徴する何かが浮かび上がるのだ。「僕」が見つけたかった真実。それは付き合っている彼女が浮気をしているかどうかだった。おもしろいアイデアだ。でも、オチが単なるダジャレなんだよね。惜しかった。
ササキカズトさんの「最強の男」の主人公の「俺」は「この町最強の男」。「この国最強の男となるために」旅に出る。そして「俺」は、あちこちの「強い奴」と出会い、戦う。最初の二人は「噂ほどではなかった」のだ。最後の奴は変わっていた。というのも「強くなどありません」というからだ。戦う気が最初からないのである。実はそいつこそ最強の男だった。どれほど「最強」なのかというと……それは内緒。そいつにやぶれた「俺」は生まれた町に帰り、戦いをやめる。おもしろいけれど、「噂」に仕掛けがほしかった。
藤峰傑さんの「ツチノコ」は、「僕」が小学校三年のとき、夏休み直前の話。「成績優秀で運動神経もよく真面目すぎず堅すぎもしない土屋くん」がいきなり「ツチノコ」を見たというのだ。あの「土屋くん」がいうならほんとうかも、そう思って、みんなは「ツチノコ」を探す。けれども見つからない。やがて夏休みが始まって、それも終わり、新学期になると「土屋くん」が転校したことがわかる。どうやら「土屋くんの家族」は借金取りから逃げ出したのだ。いったい、なぜ、そんなことをいったのか……読んでも、それがわからなくて、ちょっと困りました。
■■第21回 [ 学校 ]
学校へは誰でも行く。小学校・中学校・高校・大学・専門学校。料理学校に音楽学校、美術学校。教えてくれるところはみんな学校。メダカの学校だってある。大人の階段を昇る「大人の学校」だってあるかもしれない。
■第22回 [ 祭 ]祭っていろいろありますよね。リオのカーニバルも祭だし、学園祭だって祭、野外フェスも祭。「お祭騒ぎ」は個人的な祭なのかも。祭につきものなのは、花火、夜店、その他いろいろ。祭が終わると、なんだか寂しい。
■第21回 [ 学校 ]
4/1~4/30(消印有効)
■第22回 [ 祭 ]
5/1~5/31(消印有効)
A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。
郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。
作品には表紙をつけ(枚数外)、タイトル、氏名を明記。
別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿末尾に並べ、ホッチキスで右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。コピー原稿には別紙は不要。
作品にはノンブル(ページ番号)をふること。
作品は封筒に裸で入れ、折らないこと。作品の返却は不可。
※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。
未発表オリジナル作品とし、入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
第21回 7/1、Koubo上
第22回 8/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
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〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係
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