第22回「小説でもどうぞ」課題「祭」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第25回 [ 幽霊 ]
8/1~8/31(消印有効)
■第26回 [ 冗談 ]
9/1~9/30(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
祭
映画監督のフェデリコ・フェリーニは、自作に登場する監督役に「人生は祭だ」といわせている。なるほど、華やかだけれども、最後は寂しく終わるんだものねえ。誠に名言。
最優秀作はチバハヤトさんの「終わらない」。「米寿になった祖母は認知症が進み、僕の名前を忘れてしまった」。あと一度でいい。祖母に本名で呼んでもらいたいのだ。そして「僕」は思いつく。祭り好きだった祖母に「地元の祭り」を味わってもらえたら、昔の記憶が蘇り、「僕の名前」も思い出してもらえるかも。そこで「僕」は、かつての祭りの写真を動画をVR映像に加工し、祖母にVRゴーグルを装着させてみた。すると、どうだ、奇跡が起きたのである。そして、さらに……。結末も素敵。最高です。
山崎雛子さんの「祭りの灯」。「窃盗団」に入っていた「俺」は団を抜けるが、すぐに追っ手がかかる。だから「俺」は「祭りの人混みに紛れ込んだ」。なんだか居心地が悪いのは、周りのみんなと違って「帰る家」がないからかもしれない。そんな「俺」は射的の店を見て、突然、子どもの頃、おやじと一緒に来たことを思い出す。おやじの鮮やかな腕、おやじが見せてくれた最後の笑顔。そして「当時の俺と同じくらいの年格好の男の子」を見て「俺」は……。いやあ、最後は泣かせます。最後まで最優秀を争った傑作です。
稲尾れいさんの作品は「あの子の万灯」。「万灯」は「まんどう」と呼び、お祭りのとき、行灯状のものを幾つもつけて長い柄で高く上げて持つもの。「沿道に立つ峻太の前を、既に何組もの万灯練り行列が通りすぎていた」。よくある祭りの風景だ。行列の中に「小学校四年生の峻太と同い年くらい」の「女の子」の姿があった。「女の子は峻太の目の前で足を止め、まといを両手で持って構え……大きく一回転させる」。拍手喝采が起き、峻太の胸は高鳴る。少年時代の淡い気持ちと祭りが交錯する瞬間を見事に描いた作品だ。
森啓二さんの「祭りの夜」は、文章も設定も素晴らしい。「その島には、女しか棲んでいなかった」で始まるように、舞台は、女だけが棲む島。そこは、「理不尽な夫や家から逃げ出した女たち」が最後にたどり着くところだった。始まりは百年前。なのに、百数十年もの間「代々女だけが暮らす」のである。では子どもは? 実は海の底を通って対岸の村まで通じる秘密の地下道を通り、女たちは、祭りに出かける。そして、狂乱の夜の間に男と交わり、子を宿すのである。きわめて壮大な話だが、オチが少し弱かったのが残念。
穴木隆象さんの「宇宙の遥か彼方の祭り」は壮大なアドベンチャー(?)。「子供の頃から」祭りが苦手な「私」は、この国を逃げ出す。けれどもどの国に行っても、祭りはあるのだ。よし、それなら自然とも人間の共同体とも無関係な宇宙飛行士になろう。それなら、祭りと無関係だ! ところが、船外ミッションを遂行していると、宇宙船ではミッション終了を祝うお祭りを準備しているではないか! 絶望した「私」は、宇宙空間へ泳ぎ出す……なんとなく想像できますよね。そこにも「祭り」はあったのです。面白かった。
旭川仁さんの「祭りのあと」は、とても甘酸っぱい、初恋を描いた佳品。冒頭は「最初から、終わりがあるとわかっているような恋だった」。付き合い始めたとき、「僕」は高二で「彼女は大学受験を控えた三年生」。そんなふたりは、夏休みに入り、「浴衣を着て」、近くの夏祭りに出かける。ふたりで見上げる打ち上げ花火は最高だった。やがて、受験が終わり、彼女は卒業。彼女を乗せた電車は、線路の向こうに遠ざかってゆく。まるで、祭りのあと、花火の終わりのようだと「僕」は思う。いい作品だが、やや単調だった。
藍川リマさんの「だしにされて」は、「私は焼き殺された」という文で始まる奇怪なお話。「ナンタラ氏」の「私」を殺した宿敵の「カンタラ氏」は、集落に不作・疫病が続くと、「私の魂」を慰めようとして、「立派な廟」を建てる。そして、人びとが廟に参り、奉納物を供えると、なんと不作は終わり、疫病も収まるのである。これぞ「ナンタラ様のご利益じゃ」と喜ぶ人びと。そうやって死んだ「私」と無関係に、廟を巡る歴史は進んでゆく。参拝に祭りは付き物だが、「祭りがテーマ」の作品とまではいえない気がするが。
白浜釘之さんの「フェスティバル・マスト・ゴー・オン」の「私」は、「テレビ局に勤めている友人」に頼まれ「毎日祭をやっているらしい」「最近独立したばかりの部族国家」に取材に出かける。そして、到着してみると、いきなり派手な恰好をした陽気なおじさんに「ようこそ! 我が国へ!」と声をかけられる。なんとその人、観光大臣なのである。話を聞くうちに、このお祭りばかりやっている国の裏側にある、物悲しい事情に気づいてゆく……というお話だ。最後のオチが、日本のテレビ局の事情というのがちょっと。
■第25回 [ 幽霊 ]
「幽霊」といえば、あの「幽霊」です。他にはありません。ぼくは見たことがありませんが、見える人もいるようです。よく見る知人がいました。見えないけど「感じる」知人もいます。みなさんは如何?
■第26回 [ 冗談 ]「ほんのご冗談を」の「冗談」です。「冗談じゃない!」の「冗談」です。みなさんは「冗談」がお好きですか? 困るのは「冗談」なのか「本気」なのかわからないときですね。もちろん、作品を書くときは「本気」で!
■第25回 [ 幽霊 ]
8/1~8/31(消印有効)
■第26回 [ 冗談 ]
9/1~9/30(消印有効)
A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。
郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。
作品には表紙をつけ(枚数外)、タイトル、氏名を明記。
別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿末尾に並べ、ホッチキスで右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。コピー原稿には別紙は不要。
作品にはノンブル(ページ番号)をふること。
作品は封筒に裸で入れ、折らないこと。作品の返却は不可。
※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。
未発表オリジナル作品とし、入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
第25回 11/1、Koubo上
第26回 12/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係
ten@koubo.co.jp
応募作品添削サービス!
「小説でもどうぞ」の応募作品を添削します。
受講料 5,500円
https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/