第21回「小説でもどうぞ」「学校」入選8編の結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第24回 [ 偶然 ]
7/1~7/31(消印有効)
■第25回 [ 幽霊 ]
8/1~8/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
学校
今回は傑作といえる作品が二つあって、選考には悩んだ。「学校」というテーマで、短編を書くのは簡単そうで、実は難しい。うまく出来た作品はホームランになったようだ。
「超高性能」も素晴らしかったが、それでも、花千世子さんの「恐怖のドライブ」の切れ味には少しだけかなわなかった。タイトル通り、ここは自動車学校。その実技試験だ。「僕」は、すでに二回実技試験に落ちている。田んぼを通るルートが苦手なのに、三回目の今回もまた同じルート。ガックリだ。そして、スタート。それでも、今回は途中までうまくいっていた。絶対に合格と思ったのに、またしても……。えええっ? ふつうにすいすい読んでいて、最後に驚愕。まったく気づきませんでした。やられました。脱帽です。
Y助さんの「超高性能」の主人公は「教室の中」にいる、五十体の「超高性能、人型ロボット」だ。だが、彼らはまだ完璧ではない。というのも、「彼らを生み出してくれた人間とは、どういう生きものなのか」を教わっていないからだ。そして「最後の授業」として、人間の教師が、それをロボットたちに教えることになったのである。では、教官たちはなにを教えたのか。そして、それを教わった後、ロボットたちは何をしたのか。いや、なかなか衝撃的なラストシーンでした。これぞ、真の学校の物語なのかもしれない。おみごと。
高橋天祐さんの「跳んだ先にあるもの」は、ファンタジー? SF? ちょっと変わったお話だ。というのも、「僕」は「テレポート」ができるからだ。でも、「僕」はその現場を「クラスの中でも一、二を争う美人」の「花藤茜」に見られてしまう。彼女は、「僕」の能力をバラさない代わりに、条件を突きつける。その条件とは「彼女を毎日学校へ送ること」。もちろん「テレポート」で。その理由はなぜ? そして、彼女に何が起こったのか? なかなかワクワクする展開でした。ちょっと胸キュンな終わり方もよかった。
ともみさんの「大山まいか」は、転入生のお話だ。名前は「大山まいか」で、「サーカスの団長の娘」。自分のことを「ボク」と呼ぶその女の子は、あっという間に、みんなと友だちになってゆく。コミュ能力が高いってことだね。ところが、「大山まいか」には、このお話の語り手で、彼女のあとをずっとついて歩いている「僕」しか知らない秘密があったのだ。それが、なんだかあまり秘密っぽくないんだよね。オチがなかなか良かっただけに、無理矢理お話を作った感じがして、おしかった。もうちょっと!
吉川歩さんの「秘密」は、小学校でのお話。どんな秘密? 日直でたったひとり残った教室、ランドセルを背負おうとした「理子」は、あやまってガラスの花びんを落とし、割ってしまう。どうしよう。「担任の小谷先生」にあやまらなきゃ。でも怒ると怖いし。だから「理子」は、その花びんを花壇に埋めることにした。それが「秘密」だ。そして、翌日。ああどうしよう、「秘密」がバレたら。ドキドキする「理子」。そして……意外な展開に。そこはおもしろかったです。でも、最後のオチはちょっと蛇足だったかな。
藤岡靖朝さんの「詐欺師の学校」は、ほんとうに「特殊詐欺師を養成する学校」のお話。といっても建物があるわけではなく、ネットを通じて授業を行う学校だ。その「詐欺の授業」が淡々と描写される。なんだかほんとうっぽい。そして数日後、受講生を集めて「実践の授業」が行われた。そのとき……事件が起こるのだが、これはもう途中でわかりますよね。というか、最後の一行が決まって、お話を作っていったのだろうが、読者に見透かされてしまいそう。作者には、もっと詐欺師の才能が必要だったんじゃないでしょうか。
河村理恵さんの「その鼻を鳴らすな」は、高校の古い建物の購買部で、ほとんど話が終始する。主人公の「俺」は、新任の校長で、実はこの学校は高校生の頃通った高校だった。「やきそばパン、あるかな」と思う「俺」の気持ちを読んだかのように、購買部の「おばちゃん」がやきそばパンを箱から取り出す。これはいったいどんな話なのかと思っていると、そのおばちゃんは実は「俺」と同じバトミントン部の仲間だった。その「おばちゃん」の癖が、鼻をフンと鳴らすことなのだが、オチがちょっとわかりにくかったか。
雨寺霧子さんの「頭骨高校自殺探求部」は、タイトルからして不気味。どんな話かと思って読みはじめると、いきなり「真夜中の教室にぶら下がる首吊り死体」が出てきてギョッとする。登場人物はふたり、自殺願望があって自殺の探求をしている女子高生の「先輩」と、「日々の鬱屈」を「実用的な殺人術」に変えてノートをとる「僕」だ。ノートを見つかった「僕」は、先輩に手伝わされ、学校での自殺の原因を一緒に推理することになる。最後に意外な「犯人」が見つかるのだが、もう少し救いのある話の方がよかった。
■第24回 [ 偶然 ]
二十年ほど前、マンハッタンを歩いていたら後ろを松田聖子が怒りながら歩いてました。偶然だと思います。この前気付いたんですが、ぼくがよく使う暗証番号、○○に××足したものなんです。偶然ですよね……。
■第25回 [ 幽霊 ]「幽霊」といえば、あの「幽霊」です。他にはありません。ぼくは見たことがありませんが、見える人もいるようです。よく見る知人がいました。見えないけど「感じる」知人もいます。みなさんは如何?
■第24回 [ 偶然 ]
7/1~7/31(消印有効)
■第25回 [ 幽霊 ]
8/1~8/31(消印有効)
A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。
郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。
作品には表紙をつけ(枚数外)、タイトル、氏名を明記。
別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿末尾に並べ、ホッチキスで右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。コピー原稿には別紙は不要。
作品にはノンブル(ページ番号)をふること。
作品は封筒に裸で入れ、折らないこと。作品の返却は不可。
※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。
未発表オリジナル作品とし、入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
第24回 10/1、Koubo上
第25回 11/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
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「第〇回小説でもどうぞ」係
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