第40回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「演技」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第43回 [ 依存 ]
2/1~2/28(消印有効)
■第44回 [ 習慣 ]
3/1~3/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
演技
今回のテーマは「演技」、素晴らしい作品を読めて嬉しかったです。こんな作品が生まれたのは、小説こそ、誰でも「演技」できる場所だからなのかもしれませんね。
最優秀賞は瀬川ゆいさんの「子どもという名俳優」。完璧。たぶん「小説でもどうぞ」史上の最高傑作ですね。中身はシンプル。四歳の女の子の「あたし」は、お菓子が欲しくって、「ママ」に、いろいろな「演技」をしてみせる。でも、ママは「だめ」としか言わないのだ。そして、いつの間にか迷子に。もう「演技」をしている余裕なんかありません。そして……オチも素晴らしいけれど、この内容にぴったりで、細部まで目配りの利いた文章が、最後の最後まで緩むことなく生きていました。コングラチュレーション!
翔辺朝陽さんの「オフクロの告白」は、十年前「オヤジ」が亡くなってから「実家で一人暮らし」で、認知症が進行している「オフクロ」に頼んだヘルパーさんの電話から始まる。なんと「俺」を亡くなった「オヤジ」と思いこんだ上、さらに「あれはアンタの新しい女か?」と妄想の上塗りをしていたのである。いくら説明しても理解できない母親に業を煮やして「俺」は「オヤジ」のふりをすることにした。すると、オフクロが「衝撃の告白」をするのである。なんとなくわかりますか? 結局「俺」は……なんていい人なんだ。
跋扈さんの「文」は、「突然の手紙、そして、名乗らぬ非礼をお許しください」で始まる。これは、「藤田」の「下駄箱」に置かれた「恋文」の冒頭だ。もちろん「藤田」は読んでゆく。古風で美しい文章と文面、まるで太宰治の小説みたい。いったい、この古風な恋文は誰が送ってきたのだろう。「藤田」は、唯一悩みを相談できる友人の「高橋」に「誰か女に俺のことを話したか」と訊ねるが、ちょうど太宰を読んでいた「高橋」は知らぬ素振り。実は……そういえば、太宰の人生も「演技」っぽいですよねえ。
久野しづさんの「演技」は、タイトルからして直接的。大学を留年して実家からの仕送りが途絶え、「二十二歳の海斗」の人生は狂い始める。ついには、ある家に空き巣に入るはめになったのだ。留守だと安心して入ったところ、玄関のドアが開く音が。そして「ごめんくださーい」と呼ぶ声まで。「どなたかいませんかー。警察です」。えええっ! どうしよう。こうなったら、その家の住人のふりをするしかない。腹をくくった「海斗」は警官の前に出る。そして……そこからお話は二転三転。短いのによくまとまってます!
十六夜博士の「また息をする」は「十年ぶりに部長宅」を訪れる「家さえ失ったこの俺」のお話。実は十年前、その「部長」からリストラを宣告された「俺」。その後の「俺の人生は悲惨そのもの」。仕事も家族もすべてを失った「俺」は復讐のためにやって来たのだ。「ブルゾンのポケット」にナイフを入れて。そんな「俺」を見て、「部長」はすぐにその意図を察する。そして、意外なことを口走るのだ……いや、なんて感動的な結末なんだ。うるうるしました。でも、惜しかったのは「演技」の要素がちょっと少なかった。
岡本武士さんの「下手なうそ」は、「僕」と僕の浮気を疑う「彼女」との対話でできている。「僕」は、浮気をしていたのではなく、「軽く飲んだ帰りに職務質問をされ」ていたのだ。「僕」はそう「彼女」に「うそ」をつくのである。当然のことながら、「彼女」は「僕」を追及する。「うそが下手ね」と。「僕」が「僕の言ってるいることがうそだってことだよね?」と訊くと「信じているわよ。ただ、演技が下手だってこと」と答えるのだ。最後に「彼女」は「僕」が浮気をしていないと信じる。だが……ひねったオチです。
菩提蜜多子さんの「適役」の主人公「私」は「三十代半ば」の「独身OL」だ。実は「私」には「ヒモ」のような「居候」がいる。名前は「菅井四太」、「須賀ピョン太」というペンネームで小さな劇団の脚本を書いている。「私」の会社の編集部で「アマチュア脚本のコンテスト」を開催していて、それで知り合ったのだ。まるで「飼い猫」みたいに便利な彼氏(?)。だが、そんな「ピョン太」は、やがて「私」に仲間の「A子」の「居候」になるのだった。いい感じの短編だが、テーマの「演技」が活かしきれていないかな。
霧崎りすとさんの「真希さんのクリスマス」は、ちょっとミステリアスな作品。クリスマス・イブの午後、会社を早退した、しがない女性会社員の「私」は誰かに後ろをつけられていることに気づく。早退したのは、「イケメン、高身長で高収入の優しい彼氏」との約束があるから、というのはウソで、すべて「私」が勝手に作り上げた「設定」なのだ。どうしよう。「私」が思いついた解決策は……この先はネタバレになるので書けないが、ちょっとわかりにくい。短編だからプロットも解決も一目でわかるものじゃなきゃね。
■第43回 [ 依存 ]
最近「依存症」が話題になることが多いです。ギャンブル依存、アルコール依存、買い物依存、薬物依存、等々。名前がついてなくても、「これ、依存だよなあ」というものもたくさん。わたしももちろん依存してます。
■第44回 [ 習慣 ]誰でも「習慣」はありますね。日々決まっているルーチンというか。ぼくは寝る時、枕もとの目覚まし時計の横に、寢た時間を書いたメモを置きます。寢た時間がわからないと、どのくらい寢たかわからないからですよ!
■第43回 [ 依存 ]
2/1~2/28(消印有効)
■第44回 [ 習慣 ]
3/1~3/31(消印有効)
・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。
・書式は自由。用紙サイズはA4判。縦書き、横書きは自由。ただし、選考は縦書き、発表は横書きで行う。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。
wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
Wordファイルの中にあらかじめ書かれてある文言はすべて消してご利用ください。
・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
〔郵送の場合〕
・必ず元原稿とコピー原稿を各1部、計2部提出。
・元原稿、コピー原稿ともタイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を明記すること。
・コピー原稿には住所など個人情報を書かないこと。
・締切は当日消印有効(余裕をもって提出ください)。
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装、クリアファイル等は不要)。
・作品は折らないこと。
・作品の返却は不可。
未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
AIを使用した作品は不可。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
第43回 2025/5/1、Koubo上
第44回 2025/6/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。
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上記応募フォームから応募。
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〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係
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