第42回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「手紙」結果と講評


1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第45回 [ 隣人 ]
4/1~4/30(消印有効)
■第46回 [ 試験 ]
5/1~5/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。

手紙

傑作目白押しで、読んでいてとても楽しかったです。「手紙」は「メール」に代わったのに、作品のテーマとしては、いまも大切というか、ぴったりということですね。


最優秀作は、さとう美恭さんの「最期の手紙」。「私」の母が亡くなった。76歳だった。「母」は「白熱球」と呼ばれるほど明るい人なのに、「父は無口、不器用、カミナリ親父」。でももう相手がいないから、一人だけになった父の家は静かなはずだ。郵便受けに「母からの手紙」が入っていた。びっくり。「私」の誕生日にはいつも送ってくれた。亡くなることも知らずに送ってくれていたのか。そして、読んでみると、その内容は……いや、もう最高ですね。すべての伏線を回収した上で感動のエンディング。拍手。


桜坂あきらさんの「初めての手紙」、主人公の「俺」の彼女の名前は「弥生」。付き合い始めて三年、来年は二人とも四十だし、そろそろ「俺」は結婚を考えている。でも性格はかなり違う。「書道の免状」を持ち、俳句が趣味の「弥生」は古風で真面目。「俺」とは正反対。先週も些細なことで喧嘩をしてしまった。いやほんとうは些細なことじゃないんだけど。それから連絡がない。そして手紙が。どんな手紙でも「俺」は受け入れるつもりだ。そして読んだ……衝撃の内容です(笑)。短編のオチはこれでなくちゃ。

田中ダイさんの「神様からの手紙」も、文章が素敵です。十二月に転校してきたばかりの「私」にはまだ友達もいない。そして、先生から「冬休み明けに、自分がもらったお手紙」を持って来るよう宿題を出される。けれども、「私」は、父と一緒に夜逃げ同然で、ようやく遠縁のあばら家に住めるようになったばかり。手紙なんか来るわけがない。そして「私」は冬休み中、来るはずのない手紙を待つのだった。そして、「私」が受け取ったのは……ナイスです。それも「手紙」です。さらにその先のオチも可愛くて、いい!

くれおー樹さんの「母への手紙」は「お母さん、お元気ですか」で始まる。オーソドックスな「母への手紙」だ。送ってくれた羊羹への感謝のことば。大学生活の楽しさの報告。テニスクラブに入ったこと。下宿生活の楽しさ。近所でもう顔なじみの店もできたこと。母に買ってもらった自転車で走り回っていること。友人と旅行に行く計画。幼い頃の母との思い出。等々。どれも母が喜びそうな話題だ。実は……オチは予想されたものだったが、感銘が深かったのは、手紙の文章が素敵だったからですね。いやよかった、ほんと。

ゆうぞうさんの「二通の手紙」、「海人さん」と付き合って二年の「私」は、そろそろ、彼がプロポーズしてくれないかなと思っている。でも彼は内気で酒もあまり飲めない。「私」とはま逆だ。今日、高級レストランを予約してくれたので「ついにその日が来たかと期待した」のに、手紙をもらっただけ。そして、その手紙には……。ちょうどその時、「私」は友だちから、借金のお願いの手紙ももらっていた、そして……。二通の手紙への返事を間違えて送ってしまったから、さあ大変だ、どうしよう。オチ、最高ですね。

神田創太郎さんの「古びた手紙」は「会社からの帰り道」に「とある路地」に入りこんだサラリーマンの「私」の物語。進んでゆくと、そこは摩訶不思議な場所。なんと巨大な本棚ばかりが置いてある別世界だったのだ。そこには「明治時代のような和服に身を包み、大きなレンズの丸メガネをしていた」少年がいる。少年の話では「ここは図書館、忘れられた本が流れ着く最後の場所」というのだ。そこで「私」は本を探して歩く。そして少年の頃の「私」が「未来の僕」へ書いた手紙を見つけるのだ。泣けます……。

Y助さんの「最後のメッセージ」は、六十五歳の夫を亡くした妻の物語。病院で亡くなった夫に寄り添ってくれた看護師さんたちにお礼を告げるために訪れた「私」に、いちばん夫に親切にしてくれた看護師さんから、夫から最後にもらったという手紙を渡される。いくら読み返しても意味がわからないのだ、とも。そして「私」は、それが「あいうえお作文」だと気づく。お題を決め、その各文字を冒頭に据えて作った短文だ。それがわかると、元のお題がわかるのである。さて、そのお題とは……楽しい結末です!

十六沢藤さんの「文通」は「手紙を書くのが、嫌いだ」という冒頭から始まる。さて何が始まるのか楽しみだ。「手紙は、呪いに似ている」とか「文字は、恐ろしい」という主人公は一癖ありそう。実は主人公は手紙のやり取りをしている。古本屋で見つけた本の「ページの余白」に「お手紙お待ちしています」という言葉と住所・名前を記されていたからだ。つい出来心でそこに手紙を送ると、返事があった。中身は異様で、なんだか古めかしい。やめようとしてもやめられない。いったいなぜ……その先が読みたい。惜しい。
■第45回 [ 隣人 ]
みなさんの「お隣」にはどんな人が住んでいますか? えっ? 知らないし、話したことがないって? つい最近引っ越してきた人だからわからない? そうですよね。「隣人」って、近いけど、実は遠いのかも。
■第46回 [ 試験 ]みなさん、「試験」にはどんな思い出がありますか。あまりいい思い出はないかもしれませんね。思えば、生まれてからずっと「試験」ばかりやらされている気がしますが。もしかしたら、この公募自体が「試験」かも。
■第45回 [ 隣人 ]
4/1~4/30(消印有効)
■第46回 [ 試験 ]
5/1~5/31(消印有効)
・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。
・書式は自由。用紙サイズはA4判。縦書き、横書きは自由。ただし、選考は縦書き、発表は横書きで行う。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。
wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
Wordファイルの中にあらかじめ書かれてある文言はすべて消してご利用ください。
・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
〔郵送の場合〕
・必ず元原稿とコピー原稿を各1部、計2部提出。
・元原稿、コピー原稿ともタイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を明記すること。
・コピー原稿には住所など個人情報を書かないこと。
・締切は当日消印有効(余裕をもって提出ください)。
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装、クリアファイル等は不要)。
・作品は折らないこと。
・作品の返却は不可。
未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
AIを使用した作品は不可。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
第45回 2025/7/1、Koubo上
第46回 2025/8/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
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