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遊鳥泰隆

あなたとよむ短歌 vol.68 テーマ詠「卵料理」結果発表

柴田葵のコメント

「父は」という表現からも「犯人」は子どもであることが推察されます。ニラって、幼い子供は苦手な場合も多いですよね。味のクセだけでなく、繊維が硬めだからかもしれません。 それでもニラ玉はおいしいものです。こっそり卵の部分ばかり狙って食べる子どもを、まあいいかと受け入れて、お父さんはニラばかり食べています。実はお父さんはニラの方が好きなのかもしれません。だとしたらwin-winですね。 「ニラもしっかり食べなさい」と諭すのも愛情なら、卵だけ食べる我が子を見守るのも愛情でしょう。何が良い悪いではなく、家族の食卓というもののリアルな質感がある一首です。「ニラ玉の玉だけ」って表現、おもしろいですね。

竜泉寺成田

あなたとよむ短歌 vol.68 テーマ詠「卵料理」結果発表

柴田葵のコメント

もし「カレーのトッピングといえば?」とアンケートを取ったら「卵」は上位にランクインしそうです。でも、ゆで卵か、目玉焼きか、生卵か……どれがその人の「普通」なのか、その感覚は異なるでしょう。 この「夕飯のカレー」は、外食ではなく、家で「きみ」が作ってくれたもののようです。そこにゆで卵が添えられていたのを見て、作中の主体(視点となっている人物)は「きみは他人」だと思った。つまり、主体はゆで卵派ではなかったんですね。 もし「きみ」と主体が家族になって、ずっと長く一緒に暮らしていたら、その家の「普通」がたくさんできていくことでしょう。けれども、「きみ」とは「他人」だという事実を、主体は「うれしい」と感じているようです。 「きみ」が「きみ」だからこそうれしいのかしれません。違う人間同士が、それでも縁があってこうして夕飯を囲んでいる、そんなよろこびがしみじみ伝わってきます。

嘉賀レキ

あなたとよむ短歌 vol.68 テーマ詠「卵料理」結果発表

柴田葵のコメント

砂山を作って棒を立て、それを順に崩していく「棒倒し」の遊びがありますね。ふたりでひとつの天津飯を注文し、丸く盛られたご飯を分けて食べている様子を、子どもの頃の遊びになぞらえた一首です。きっと他のメニューも注文して分けあっているのでしょう。 「うれしい」「おいしい」などの感情語は入っていませんが、ふたりの親密さや、あたたかな天津飯が想像できませんか? 棒倒し遊びの楽しさ、幼いころの気を許した感じが、町中華のワンシーンにぴったりとマッチしています。「交互に掬う」というところからも、自然と息の合った様子が伺えます。

山和うら

あなたとよむ短歌 vol.68 テーマ詠「卵料理」結果発表

柴田葵のコメント

「卵料理」というテーマ詠だからこそおもしろい一首ではありますが、とにかく「全滅の十個」という出だしが絶望的でいいですね。ワンパック全部だめでしたか……。それでも「子はいつまでも笑っている」という大らかさと、明るい黄色で埋めつくされたお皿が輝いているような歌です。

谷まのん

あなたとよむ短歌 vol.68 テーマ詠「卵料理」結果発表

柴田葵のコメント

「私にはない」と比べること自体が変だといえばそうなのですが、どうしても「卵かけご飯には、真剣に向き合って専用の醤油まで考える人たちがいるのに、自分のことをは誰も見てくれない」というように、ねじ曲がった、けれども切実な寂しさを感じることはあるものです。