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HSS 5周年記念！ファンアートコンテスト

2021/06/16 掲載

締切日: 2021年7月4日（日）
主催者: ILLUST DAYS 講談社 ✕ 未来創造
賞: 優秀賞『HSS』の新曲PVのひとつに使用
応募資格: 資格不問

主催者サイト

新世代VRアイドル『Hop Step Sing!』の５周年を記念して３人のファンアート企画を開催します！！優秀な作品は『HSS』の新曲PVのひとつに、使わせていただきます！愛と応援の気持ちがつまったファンアートたくさんのご応募お待ちしております！

募集内容: ILLUST DAYSで『Hop Step Sing!』のファンアート作品を投稿してください。（イラスト、漫画など、形式は自由です）　①「未来」　②「友情」　③「革命」この3つのキーワードのいずれかをテーマに、作品を制作してください。
作品規定: 募集期間 2012年6月4日㈮～7月4日㈰23:59投稿分まで応募方法『Hop Step Sing!』３人のファンアートをILLUST DAYSで「hss5」のタグをつけて投稿してください。※「」は含まない・漫画などの形式でも応募可能です。・「未来」、「友情」、「革命」、3つのキーワードいずれかをテーマに作品を募集します。
応募方法/応募先: 詳細は主催者WEBサイトを参照
応募時の会員登録: 不要
募集期間: ~ 2021年7月4日（日）
応募資格: 資格不問
賞: 優秀賞・　優秀作品は『HSS』の新曲PVのひとつに、使わせていただきます！
審査員: ・吉田昌平（委員長・講談社第四事業局「Hop Step Sing！」プロジェクトチーム）・石丸健二（「Hop Step Sing！」プロデューサー、講談社VRラボ代表取締役）・「Hop Step Sing！」メンバー（虹川仁衣菜、椎柴識理、箕輪みかさ）
補足: ★複数応募も可能です。 ★授賞に至らなかった場合も、講談社よりお仕事の依頼でご連絡を差し上げる場合がございます。 ★選考過程や結果に関するお問い合わせには応じられません。 ★応募作および受賞作の著作権は投稿者に帰属しますが、受賞作は一定期間『Hop Step Sing！』のプロモーションに使用させていただきます（2021年いっぱいを予定しております）。

出典：https://illust.daysneo.com/award/hss5.html
コンテストの趣旨がより明確に伝わるよう、公式サイトの画像を一部引用させていただくケースがございます。掲載をご希望でない場合は、お問い合わせフォームよりお申し付けください。

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新着情報

つくログ

タカハシヒロナリ
2025/10/05 22:11
次回のW選考委員は、敬愛する椎名誠先生！ダレかけていた創作意欲が盛り上がってきました。一部では「昭和軽薄文体」と言われている、あの飄々とした語り口には憧れたものです。いや、実際影響は受けているかも。エッセイ、紀行文、評論、小説と多作で内容も多岐にわたるので、どんな作品が好みなのか読めません。でも頑張りたい。椎名誠先生に読んでもらいたい…。久しぶりに落選供養を。思いつきと勢いだけで書き、狙いすぎて手からすっぽ抜け明後日の方向に飛んでいってしまったような作品です。 #第48回小説でもどうぞ落選供養「アブダクション」　目が覚めても、しばらく目を閉じてじっとしていた。土曜日の昼、いつもは近くの公園で遊ぶ子どもたちの声が聞こえるのに、今日は静かだった。　その静けさに僕はニンマリした。僕は静かなのが好きだった。なによりひとりが好きだった。なるべくひとりで黙々とできる仕事をしているし、友人との付き合いも最小限にとどめている。ひとりでネットフリックスを見たりするのが何より好きだ。その意味合いにおいて今日は完璧な日だった。なんの予定もないし、外は静かだ。　だが、しばらくして僕は起き上がった。何か変だった。静かすぎるのだ。近くの公園だけではなく、アパート前の通りも静かだった。人の声も、車の音もしない。　僕は窓を開けてしばらく外を見ていたが、次第に不安になってきた。本当に誰もいないのだ。誰もいない交差点で動く信号が、この状況の不気味さを際立たせている。　僕は窓を閉めると、テレビをつけた。そして絶句した。どのチャンネルにしても、画面に映るのは「ただいま放送を休止しております」の表示だった。　僕は外に出て、駅に向かって歩いた。誰も歩いていない。車も走っていない。駅も全くの無人だった。それどころか電車も走っていない。「これはいったい…」僕はつぶやいた。それからふと思いつき、友人に電話をかけた。誰も出ない。呼び出し音がいつまでも鳴り続けているだけだった。　僕は途方に暮れた。その時後ろで声がした。「☆€%*>゜$」　僕は振り返り、そこにいたものを目にして息を呑んだ。　見慣れない何かがいる、それもふたり…、という数え方が正しいのかどうか。身長は2mほど、濃いグレーの、一見するとビニールのような服を着ていた。服にはつなぎ目がなく、頭にはヘルメットをかぶっていた。片方が僕を指さし、もう片方が何か言った。「÷＋○$¥#」　そいつらはアルミホイルを丸めるような声を発した。「#&%*`@」　片方がまたなにか言った。明らかに僕に向けて言っているが、何を言っているのかわからない。僕が固まっていると、片方がもう片方を軽く叩き、なにか言った。叩かれたほうは腰のあたりのポケットに手を突っ込み、なにか取り出した。銀色に光る真四角の箱のようなものだった。そいつはそのデバイスを操作すると、それに向かって喋り、僕に向けた。するとそのデバイスから声がした。『あなたはなぜここにいるのか』　僕は呆気にとられた。そいつはさらにデバイスを通じて僕に言った。『人類は全員捕まえたはずだ』「は？捕まえた？全員？」　僕の言葉がデバイスで翻訳され、そいつらに届いた。そいつらはデバイスの音声に耳を傾け、また言った。『全員というのは地球上にいる人類全てということだ』「いや、全員の意味はわかるけど…、捕まえたってどういうこと」『我々の乗ってきた船に乗せた』　僕は首を振った。「嘘だ。だって昨日の夜はみんな普通にいたぞ」『一晩で我々はそれを実行した』「なんでそんなことを」『地球の調査だ。我々の星はもう住むのに適切な環境ではない。地球は移住先候補だ。地球はいつでも移住先惑星人気ナンバー1なのだ』　デバイスを持っていないほうがごそごそとポケットを探り、円筒形のなにかを取り出した。取っ手らしき物もついていて、銃のようにも見える。そいつはボタンやらダイヤルやらをいじり始めた。その間、片方がまた言った。『じゃあ、お前も捕まえる。悪く思うな』「ちょ、ちょ、ちょっと、やめて」　銃を向けられ、僕は慌てて言った。『大丈夫だ。痛くない。ちょっと痺れるだけだ』「違う。異星人に捕まりたくないんだ。どうせ殺すんだろう」『殺すものか。我々は友好的だ。人類には我々が宇宙に建設した疑似惑星に引っ越してもらう。地球ほど美しくないが、資源もエンタメも豊富だ。猫もいる。それに君の家族も友人もそっちにいる。そのほうがいいだろう』「家族も友達も？」『そうとも。楽しく暮らせるぞ』　僕はすこし考えた。もう人類が僕を除いて誰もいなくなった地球を見渡した。「やっぱり遠慮するよ」『なんだって。なんだお前は。もう地球は我々のものだ。人類はだれもいないんだぞ』「いや、それは別にいいんだけど。おれ、ひとりが好きだから。誰にも干渉されたくないのよ。むしろ人類消してくれてありがとうって感じ」　黙り込むそいつらに僕は続けていった。「おれはこのまま地球でひとりで暮らすよ。あんたらの邪魔になんないようにするからさ」　そいつらはお互い顔を見合わせた。小声でなにか話し合っている。やがて僕の方を向いた。『わかった』「ほんと？わかってくれた？」『ああ』　それから間髪入れず、片方が僕に銃を向けた。先端が光ったが、それを見たのも一瞬だった。僕の体は痺れ始めた。両腕と両足が体から離れない。僕は一枚の板のように地面に倒れた。固まった僕をそいつらが覗き込む。『お前には疑似惑星の近くにある一人用の惑星を提供するよ。ちょうどひとつ余ってたんだ。一生ひとりで暮らせるぞ。さあさあ、行くぞ』　そいつらは僕を抱えると、近くに留めていた宇宙船に運び込んだ。地球がどんどん遠ざかるのを宇宙船の窓から見ながら、やっと痺れが取れた僕は、顔を上げてそいつらに訊いた。「そこ、ネットフリックスはある？」　そいつらは僕を振り向き、言った。『ああ。アマプラもあるぞ』「そう」　　僕はまた天井を向いた。「ならよかった」
yuzu
2025/10/05 20:47
#第47回どうぞ落選供養こちら、人生のまさか、でしたが、逆転にはあわなかったでしょうか…。父と息子じゃ逆転にはならなかったかな。でもお気に入りです。逆転「隣の彼はVtuver」人生にまさか、は起こる。タニガワは「自分から手に入れましたよ」と意外と似合うタキシード姿で悪戯っぽく笑って言った。　さとり世代だかZ世代だか知らないが、俺の隣に座る彼、タニガワは、入社式の翌日から定時退社をモットーとし、言われたとおりのことだけをこなし、鳴り響く固定電話にも決して対応しようとしなかった。教えても基本的に自分からは動かない。飲み会に誘えば「残業代でますかね？」と言われ、開いた口がふさがらなかった。黒髪の至って真面目そうな風貌で、気になるところは前髪が長くてうざったいのと眉毛が切れそうに細いところか。　今はそんな時代なのか。40歳課長補佐、タナカはジェネレーションギャップをひしひしと感じていた。彼にとっての今すべてが、タナカが見てきた世界とは異なっており、相容れない仕事への価値観の溝が横たわっていた。　18時になると、今日も彼はすっと席を立った。部下のプライベートに口をはさむのはいかがなものかと思い、目をちらっとやるだけでとどめておいた。しかし、まだ業務が残っているのだ。やれやれ、口をひらけば小言がでそうだ。プライベートのことを聞こうものなら、やれ○○ハラと言われるやつか。　まあ、就業時間中に黙々と仕事をする奴なので、多少コミュニケーションがとれなくてもよしとしよう。前髪も切ってやりたいくらいだが。しかし、報連相たるものをしてくれないので、何とも効率が悪かった。彼は指示されたことにしかしないのだ。指示待ち人間というか、会社には極力エネルギーを割きたくないのだろうな、というのがみていてわかる。「商品の先にいるお客様の幸せを考えろ」「自分から動くんだ」ついつい口調もヒートアップしそうだ。彼は真っ直ぐな目で見つめ、小さく「自分から」とつぶやき「はい」と返事した。彼の教育方針を一度考えねばな、と思いながら、何となくうまくいかないまま１か月が経った。たまたま社員食堂で、タニガワの隣の席しか空いておらず、俺はＢ定食の盆を持ち「ここ空いてるか？」と聞いた。タニガワはうす、みたいな小さな声とジェスチャーをする。お盆をすっと寄せてくれたのが了解ということなんだろう。タニガワのスマホの画面がちらりと目に入った。そういや、よくこいつはこれを開いているな。喫煙ルームでもこの動画を観ている彼に出くわしたことがある。「俺の娘がさ、そいつ好きなんだよ。やっぱり絵がきれいだよな」「……課長補佐、娘さんいるんすか」「これは何ていうんだ、絵がさ、動くんだろ。どうやって作ってんだろうな」俺はＢ定食のカツを口に入れながら、彼が見ていた動画を見た。タニガワは、キャベツとか野菜ばかりを皿の脇に寄せていた。子どもみたいなやつだ。「お前、よくこれ観てるよな」「……僕が」「え？」「つくってるんですよ」「え！？」驚きすぎて食後のお茶を吹き出しそうになった。Vtuber？Youtuberとはまた別物なのか。「趣味なのか？え、ど、どうやってつくるんだ？」「副業っすね。うちの会社、副業大丈夫っすよね。３Dとかのアバターを動かして配信するんすよ。ライブ配信したりね」どうやら新入社員のくせにやたら羽振りのいいスーツや腕時計などはその副業代でまかなっているらしかった。何てやつだ、仕事もそれくらい独創性と熱心さを持ってやってくれ。　よくよく彼のスマホを見ると「猫野おかず」と登録名が表示されていた。しかし何て名前だ。俺が必死に覗き込もうとしてるのに気づき、真っ赤になった彼は「別にやればだれでもできますから」とバッと画面を伏せた。　いやいやいや。違うのだ、彼が必死に隠しているその「猫野おかず」こそ、我が生意気ざかりの反抗期の娘アユミが心から尊敬するVtuberなのだ。「娘とな…昨日も喧嘩したばかりなんだ」「そうなんすか」「反抗期の娘なんてな、口を開けばお父さんクサいキタナいウザいしか言わないぞ？昨日もテンションをあげて話しかけたら全部無視だ」「そのテンションがウザかったんじゃないですか」と、タニガワは即答した。そうだったのか。そこで娘が「猫野おかず」の大ファンだと告げた。思えば、タニガワとアユミは歳も離れていないのだ。感覚も近いのかもしれない。俺はタニガワに向きなおり、頭を下げた。娘に喜んでほしい一心だった。　あの日彼を家に連れ帰り、残業代がわりにメシをごちそうした。アユミは狂喜乱舞した。 3ヶ月後、タニガワとアユミはデートをしていた。高校卒業を控えたアユミを驚くくらい、タニガワは大事にしているようだ。タニガワの仕事に対する姿勢も、目に見えて変わった。 3年後、タニガワとアユミは揃って、パリっとしたスーツとワンピース姿で現れた。タニガワは今や係長だ。まさか部下におとうさんと呼ばれる日がくるなんて思わなかったのに、とんだ息子を迎えてしまったものだ。
一文字
2025/10/05 18:01
#第48回どうぞ落選供養嫌なことは連鎖していくんだ、と目の前に置いてある灯油の切れたストーブを見ながら思った。今日は朝から災難だった。雨は降る、路線で交通事故が起きて、小さな折り畳み傘しか持ってなかったので買うのももったいなくて、ひたすら学校までぐしょぐしょのローファーを引きずって歩いた。鞄もびっしょりであまり開かない綺麗な教科書もくたくたになった。紙が大波打っただけだけど、こんなことなら、もう少し勉強していたらちょっとは残念な気持ちも減ったかな…。ずっと悪いやつになっていたような、嫌な居心地の悪さをひっきりなしに感じていた。結局帰りまで雨は止まず、鞄もじっとり濡れたままで、いっそのこと濡れて帰ってやろう、とやけくそになって家に帰ればストーブ、お前もか… 目の前のストーブは、ひたすら灯油切れのお知らせのエリーゼのためにを尖った電子音で鳴らすが、今日1日のとどめの一撃を何度も喰らっているような気がしてうんざりする。わかったってば、もういいよ。めんどくささが爆発しそう、と思いながら、伸ばしても右端の電源スイッチに手が届かず、自分の低身長までも呪いそうになる。そのまま、ストーブの前で椅子ごとばたんと倒れた。灯油くさい匂いを嗅ぎながら、惨めさと痛さがじわじわ来て起きる気力もない。ぐっと重い鈍痛がした。脇腹は痛いですよ…倒れた拍子に椅子の背もたれからボディを喰らっていた。身をよじって天井を見たがひとりごとも虚しい。こういうの見て、笑い転げたやついたな…とそいつの顔が浮かび、無気力にしゃっと赤い線が引かれたような気がして、嫌な感じがしながらのそのそと起き上がる。高校3年生の春。世間の人たちの持つイメージとはかけ離れて、名ばかりの青春がひと段落し、受験という隠れ家をやっと持てたこの頃に、一つ、幸せを失った。うざったい嘲りや、ひどくベタつく冷笑なんか、ものともしなかった。そんな人だったのにな。心に残るのは、楽しかった毎日なんて言葉では表せないくらいに光ってた時間だった。暑い時はサイダーの中のビー玉を取り出して、この中の海に飛び込んでみたいねって、頭を寄せて、陽に当てたガラスの中の空気が影を作ってキラキラしてた。寒ければストーブにかじりついて、冷たい手かざすふりして奴の首に貼り付けて遊んでた。もう燃料切れの警告音すらしなくなったストーブの冷たい金属の感じが、わたしの手が冷たすぎてびっくりしてた奴の顔と重なってしまって無性に寂しくなった。しょーもない、ありふれた毎日だったのに、特別なことなんて、何にもなかったのに。平気で人の前で悪口を言うど阿呆もいれば、机に齧り付いて、自分の望む未来を見据えている賢い子もいたのに。そんな中に、わたしもいたのに。何が違かったのかなんて、何にもわかんないよ。声に出せ、腹から歌え、バカにはバカと言え。あんただって、そう思ってたでしょ？憂うつな気分で起き上がって、バカな私とともに倒れたかわいそうな椅子もついでに起こした。机にはさっきまで読んでいたやつからの手紙が、元気のない落ち葉みたいに、かさっと音を立てた。読み終えられて所在ないように、どうすればいいのかとこちらを見つめてるような気がした。手を伸ばしてみるけれど、わたしだってどうしたらいいのかわからない。そもそも、どうしてなのかもわからない。やつの手紙には、簡単な言葉だけ、さよならだけが赤い鉛筆で書かれているだけだった。やっぱりコンテストに名前ない〜と残念（そりゃそうだ）はじめて小説でもどうぞに参加した作です。書くの楽しいな〜と思っていましたが、文字数少なくて、ちゃんと規約読もう…と思いました。両手合わせ。チャレンジ1回目です。頑張った〜と思うことにします！
三山　敦
2025/10/05 17:06
ファンタジー系の小説、試しにダブついていた設定を2つ削った案を読み直してみたら（一万字ほど飛びましたが）、何か全体的にシュッとした内容になった気がするので、書き直しのやる気が俄然増してきました。最後まで直しきれるといいなあ。
秋川おふろ
2025/10/05 11:48
こんにちは。みなさん、毎回何作も投稿されていて凄いですね。もっと創作に当てる時間を増やして精進せねばと感じました。今回のテーマは「孤独」。今回はいつもと趣向を変え、他人と被らなさそうな題材で書いてみました。明示的なオチのない作品になっているのですが、気に入った展開にできたのでこれで勝負することにしました。ぜひ、ご感想いただきたいです。 #第48回どうぞ落選供養タイトル：わんこそばと猛獣氏名：秋川おふろ　わんこそばを啜るとき、人は無口になる。よく蟹を食べるときに人は無口になると言われるが、わんこそばを食べるときにも会話が途切れるということを志田は今日初めて知った。「店の選択、間違えたんじゃない？」　静寂を破り、向かいの席に座る山村が箸を止めて言った。「まあ一理あるんだけどお、志田のお帰り会なのにい、普通じゃつまんないと思ってさあ」　寺内は幹事という立場を忘れて既にビールを４、５杯喉に流し込んでおり呂律が怪しく口調もふてぶてしい。その以前と変わらない姿に親しみが蘇る。２年間のインドネシア勤務から帰任したばかりの志田のために今や少なくなった同期がこのささやかな会合を企画してくれたのだ。それにしてもわんこそば居酒屋だなんて、寺内の思い付きは普通ではない。製粉会社だからって別に粉もんに縛られる必要はないと思うが。「おっと脱線してないでさあ、わんこそば食べちまおうぜ。時間制限もあることだしい」　寺内が給仕に向かってきびきびと手を挙げる。初めて来たであろうに常連のような自然さだ。なんとなしに見ていた志田はその手に指輪を見つけて眉をひそめた。左手の薬指が店内照明で僅かに光る。「お前、結婚したのか？」「あれ、言ってなかったっけえ？」　寺内は俺たちもう３２なんだからわざわざ報告するまでもないと思っただの、海外で忙しく躍動しているのお前を邪魔したくなかっただの、求めていない弁解を重ねる。志田の頭の中に振り返りたくないインドネシアの空が映る。思えば赴任先では一人黙々と堆積した業務の山を捌いていた。日本にいたときより陽気な同僚とは時間感覚も合わないし、「今日からラマダンなんで」と食事も躱されるし、環境が違いすぎて休日は１人で過ごした記憶ばかりが想起されて、浮いた話の１つもない。２年前はその手の自虐ネタはここにいる者全ての共通の酒の肴だったのに。　志田は山村にはまだ幸福の魔の手が伸びていないことを期待して紅一点の山村の私物をまじまじと見やる。「え、何？　志田も酔っぱらってるの？」　山村は小さく笑いながらも怪訝というより後ろめたげな目をしている。山村のトートバッグには猫のようなキャラクターのキーホルダーがぶら下がっている。「それ何？」　虚をつかれて山村は遅れて返事をした。「あ、これ？　ふんにゃん」　ふんにゃん。　聞けば粉の精霊をイメージしたキャラクターで、志田がいない間にうちの日本法人が打ち出したものらしい。絶妙に目の奥が笑っていない顔つきはどことなく自分に似ている気がしてくる。志田はそう思いながらも、うちの企画部がフィーリングで作ったであろうどこかで見覚えのあるフォルムが誰かの著作権を害していないか気がかりになる。「そんなに欲しいならあげるよ、また粉作り体験ランドに行けばもらえるから」　志田は山村が差し出したふんにゃんを受け取った。そんなあからさまにカップルかファミリーしか訪れなさそうな施設を訪れるだなんて、山村には彼氏ができたのだろうか。いやしかし、俺はインドネシアで製粉の未来を見てきた。技術向上にキャリア、何かに集中できる時間は寂しいだなんて辛気臭い考えを払拭させてくれるのだ。　しばらくして、２人はお手洗いにたった。志田は手のひらに寝そべるふんにゃんを見ながら言語の通じない同僚を思い浮かべる。同僚との壁を感じながら製粉の販路拡大に奔走した孤独な世界だった。けれどこうして気のおけないはずの２人を前にしたのに、安堵どころかむしろ疎外感を覚えるのはなぜだろう。　志田は荒くなってきた呼吸を整えようと鼻をすすり、選手宣誓のように手を高く上げて給仕にそばのおかわりを要求した。そそくさとお盆を持ってやってきた給仕が志田のお椀にそばを注ぐ。決め細やかな職人技で描かれた丹頂鶴の美しい漆塗りのお椀に見惚れながら黙ってそばを啜る。志田は次のそばを要求した。瞬く間に平らげる。志田の眼前に鮮やかな鶴の模様のお椀が積み重なっていく。また重なる。志田は次第に決め細やかな筆遣いも全て同一のプリントでまた同じ絵柄がやってくるのだと意識し始めた。またそばを啜る。積み重なったお椀はついに志田の年の数を越えた。それでも延々と給仕の手から同じデザイン、同じ量のそばが継がれ続ける。志田はそれを同じ動作で啜り続ける。志田がストップをコールしない限りこの繰り返しは続くのだ。４０を過ぎても、５０を過ぎても。　ぶわっと視界が滲んだ。志田は痙攣のようなまばたきを伴いながら嗚咽して、口に含んだ３４杯目のそばは手に持ったお椀の底に落ちた。志田は自身の声を封じることができずに畳の上に突っ伏した。給仕は突然のことにたじろいだが、飛びよって肩をさすった。　トイレから帰ってきた山村と寺内は給仕に抱えられた志田を見て笑った。志田が畳に四つん這いになり、頬から滴を垂らしながら肉食獣のような噛み殺した笑顔を向けていたからだ。「そんなにふんにゃんがもらえてうれしかったのですかな？」　山村がいつもの茶化した笑いを放ってくる。「ああ、今夜はふんにゃんを抱いて寝るわ」　志田はけろっとして、もう自然な笑顔に戻っていた。

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